北アルプス双六岳雨天決行編

こ、今度こそ高峰へ!

前回夏の低山のおそろしさを身をもって体感させられた強化人間331。情けないことに、最近はこの名前にふさわしくない山行が数多く実施されました。やれ夏風邪だやれ焦熱地獄にバテただと、言いわけがましい記事が目立ちます。

そうした傾向に拍車をかけるようで恐縮ですが、なんとまあわたし、ついに親知らずを抜いたのですよ。ひょんなことから歯科医にかかったところ、奥歯のさらに奥から立体的に生えてると。しかもこいつがまずい位置にあるため虫歯に罹患しており、抜くのがいちばんよいという話でした。

歯を削るだけでも死ぬほど痛いのに、そいつを抜くとなるといったいどうなってしまうのか?とはいえ放置して痛み出すのはもっといや。いっちょ男を見せたろうやないかい!というわけで施術をしてもらったのです。

口腔外科医の専門家にわざわざやってもらったのですが、かなりまずい位置にあるとかで10〜15分ほどもえんえん削ったりペンチでぐりぐり引っこ抜いたりの突貫工事となりました。麻酔のおかげで痛みはほとんどないものの、神経を引きちぎるおぞましい音が鳴り響き、手足は阿呆みたいにぶるぶるふるえ、背中は冷や汗で水たまりを作る始末。おそろしい体験でした。

というわけで、現在左の頬がまともでない状況です。こんな体調で山かあ。どうしようなあ。だるいなあ。痛いしなあ。しかも台風がくるとかで天気もなあ。

ちょっとお前、ええ加減にせえよ!

自分に喝を入れました。お前最近だらけすぎじゃろホンマ。いいからいけ。アルプスへいけ。ほらぼーっとすんな。いますぐいけ!とりあえず北アルプス双六岳で決定です。8/6-7、月曜日はお休みをとって出撃。天気はもつのか?

1日めのコースは以下の通り。

深山荘無料駐車場〜新穂高登山口〜笠新道登山口〜小池新道登山口〜秩父沢〜シシウド原〜鏡平小屋〜弓折乗越〜双六小屋

1日で北アルプス西の要衝双六小屋まで入ってしまおうという腹。さてどうなるか。耐えきれるか。ちなみに標高差1400メートル、距離16キロだそうです。先に調べておかなくてよかった。

出発

泊まり山行だといきおい出発が遅くなります日帰りでも遅いですが。たらたら準備しているうちに9時をすぎました。これから北アルプスですか。だるい身体に鞭打って運転すること2時間45分、正午ごろようやく深山荘無料駐車場に。

余談ですがこの駐車場は登山者のためだけに作られたありがたいスペース。ロープウェイの手前、洞門の切れ目を左折すれば辿りつきます。ただお盆やシルバーウィークなどの大型連休のときには相当の早出をしない限り、まず駐車は不可能。むちゃくちゃ混みます。ご利用の際には深夜インくらいの気概が必要でしょう。この日は日曜日で天気もよくなかったため、十分空いてました。余裕の駐車でにっこり。

なにやらまただらだら関係のない話が続きそうな予感がしますので、お急ぎのかたは写真だけ追ってってください。新穂高インの場合、槍へ通じる右俣、そして今回の双六方面の左俣、どちらにせよ長い林道歩きが非常にだるい。これさえなけりゃなあ。

岐阜県は昨今の遭難件数の伸び率に頭を悩ませており、ついに登山届提出が条例で義務化されました。非常に面倒です。だいたいこんなもん義務にしたってたかが知れてますよ。いままで出さなかったやつらわたしのような危機感ゼロの楽観主義者は義務を重荷に感じて、出すには出しますが中身は氏名のみとか、適当に1分くらいで書いて提出するでしょう。

いっぽう言われなくてもきちんと提出していた優等生どもは、義務化されようがどうされようが以前と変わらずちゃんとした計画書を投函する。前者のはどの山にいくかもわからないクソドキュメント、後者は一目瞭然の優良文書。いままで出さなかったやつの登山届が全部こうだとは言いませんが、たぶんなんの足しにもならないしろものを出してると思うんですけどねえ。げんにわたしのがそうだし。

統計を見ますと、確かに平成11年北アルプスの遭難は139件、28年は270件となっており、ここ20年あまりで実に倍増しております。これをどう読み解くか。簡単です、単純にプレーヤーが登山ブームで激増したためですね。人が増えれば遭難も増える。登山をしないやつらがよく指摘する無鉄砲な登山者が裸一貫でアルプスに突撃しているというのはある程度、錯覚でしょうね。

林道を歩くこと1時間、ようやく笠新道登山口。ここには水場があり、冷たくておいしい水を早速補給。この登山道はすさまじい標高差で悪名を馳せており、この日も下りきった山ガールがへろへろになってるさまを目撃しました。彼氏といちゃこらする元気は残ってたようですがね!

これはあらゆる統計によく見られるマジックのひとつであり、その最たる例は世界の貧困者数。ちっとも減らない貧乏人の数に慈愛あふれるなんとかNPOとかが心を痛め、しきりに根絶を呼びかけてますね。そりゃもちろん明日の飯にも困る子どもが大勢いるのはよいこととは言いがたいけれども、だからといって世界が無関心でなんにもしてないと断罪するのは大きなまちがいです。

飢餓にあえぐガキが一向に減らないと嘆く団体がすっかり忘れてるのは、摂取カロリーを改善した人間の数を上回る勢いで人口が増えているという点。実は年飢餓者数は微減程度の推移なのですが、これは人口増加を含めての実績。遺伝子組み換え作物で耐病、対害虫特性を得たトウモロコシやダイズが獅子奮迅の活躍をしているわけです。

やたらに遺伝子組み換え野菜を攻撃するファンダメンタリストがいるようですが、彼らの主張はたいてい根拠のない無知をさらけ出したものが多い。自然じゃないというのをよく耳にするけれども、それを言ったらイネもトウモロコシもすべて、もとの種を何千年もかけて品種改良してきた改造野菜ですよ。ほんと阿呆らしい。その何千年をすっ飛ばして遺伝子を直接いじった途端、彼らのなかでは突如としてそれらが怪物になるらしい。ぜんぜん筋が通ってない。

1340ごろ、やっとわさび平小屋に。きゅうりやトマト、ビールにジュース、カレーにうどんとなんでもござれ。とくに野菜類を販売してるのはよい目のつけどころでしょう。連泊登山ではとにかくビタミン、ミネラルが不足するので、下山後の野菜が死ぬほどうまいものです。ここで昼飯としました。ちなみにジジババばっかり。若者はどこへ?

長くなって恐縮だけれども、遺伝子組み換えによるバイオテクノロジーを駆使した農業は、今後もさらにトレンドになっていくでしょう。いまや農業に適した土地は使い尽くされた感があり、これからは限られた土地でいかに収穫量を増やすかが鍵になる。遺伝子組み換え野菜は人びとを飢餓から救う第二の緑の革命なのです。

アンチ団体はろくすっぽ勉強もせずになんとなく怖い遺伝子組み換え食品を排他的に扱い、その潮流が研究者を志す学生を当該分野から遠ざけ、間接的にアフリカなりアジアなりですきっ腹を抱えたガキを大量虐殺しているという事実を、いま一度考えてみるべきではないでしょうか。

おわり

北アルプス北アルプスの続きは!?

はいはい、でも初日はご覧の通り雨降りでしたので見どころないですよ。それでもよいならのぞいてやってください。

やっとうんちくも終わり、本編も軽快に進むはずです。小屋をすぎてもまだ林道は続きます。長い。

やっと小池新道登山口ですよ。ほんとだるい。林道歩きはホンマにだるい。たまに関係者らしき連中がごきげんで車を運転してますが、何度あれに乗せてってくれと思ったことか。15人くらいの小型バスをシャトル運行すればいいのに。五千円までなら出しますよマジで。それくらいこの林道はだるい。

ここは秩父沢。なんぼ北アルプスといってもまだこのあたりは標高1000メートル台。やっぱり暑い。そんななかごうごうと音を立てて流れ下る沢は非常に涼しい。根の張る前に歩を進めます。それにしても日曜日とあってか、下りてくる登山者が多いですねえ。こんな遅い時間から登ってるのはわたしくらいのもんです。

しばらくは沢を横手に、ガレた道を緩やかに登っていきます。北アルプスにくれば無条件に涼めると思ってたわたしが甘かった。低山ほどではないにせよ、やはり暑い。きっつー。

と思ったら、シシウド原あたりからさっと涼風が吹きぬけ始め、ようやく高峰っぽくなってきました。ご覧の通り沢にはまだ雪渓が残ってます。あの、8月なんですけど。この時点で1545くらいでしたかね。

さあそれはそうと、なんとかもっていた天気もここでついにダウンを喫しました。バケツをひっくり返したような雨が降ってきて、一気にモチベーションを奪っていきます。ザックカバーをかぶせ、レインコートを羽織り、とぼとぼと雨天のなか進む。よっぽど引き返してやろうかと思いましたが、ここまできたら進むほうが近い。泣く泣く続行です。

上がらぬ士気を奮い立たせ、1645ごろ、やっと鏡平小屋です。これは鏡池。晴れていれば正面に穂高と槍がどどーんと目を射るんですけどねえ。

鏡平小屋にはテラスとベンチがあって休憩にはうってつけ。ザックを下ろしてぐったりと座り込みます。ここにテントサイトさえあれば迷わず幕営するんですけど、あいにくと小屋のみの営業ですので泣く泣く続行。入り口付近でビール片手にばか笑いをしているじいさんどもを恨めしく睨みながら、菌糸をベンチから引き抜く思いで歩く。せめて雨さえ降ってなけりゃあなあ。

一面真っ白。ガスガス。ヒルが出ないことだけが救いです。ここから弓折乗越までけっこうきつい登りがあり、まあこたえるこたえる。血反吐をぶちまけながらなんとか歩き通し、

1730ごろ、ついに弓折乗越ですね。標高は2500メートルほど、樹木も姿を消し始め、いよいよそれらしい雰囲気に。幸い雨は止みましたが風が強い。あれだけ下で暑い暑い言ってたのが嘘のように寒い。早いとこ濡れた衣服を脱がないと風邪ひきますよこれ。

晴れてれば抜群の展望台になったんでしょうが、あいにく終始こんなありさま。

ただ弓折乗越から双六小屋までは緩い登り降りの続く楽ちん縦走路。ここまでこれば気力でなんとかなります。ご覧のように一部雪渓はありますが、まったく問題なし。

とても信じられないでしょうが、この縦走路は文句なしの絶景を味わえます。晴れていればの話ですが。

何度か小ピークを登ったり下りたりしたあと、道が緩やかに下降し始めました。これは記憶にあります。確かこのパターンになったら双六小屋は近かったはず。

木道が敷かれてます。高原然とした雰囲気。雄大です。

おおお、ま、マジか。やっと着いた。

相変わらずの曇天ですが、こんなのでもましなほうです。

そしてこれがうわさの双六小屋。さすが西の要衝、堅牢な造りです。小屋というよりロッジに近いか?雨が降ったままだったら素泊まりで小屋に逃げ込もうとよからぬたくらみをしていたのですが、こういうときに限って止みやがる。

ちゃっちゃとテントサイトの料金を払いお値段千円なり。北アルプスはショバ代が高いですなあ。南アルプスなんて半額でしたよ。まあ小屋泊に比べればそれでも10分の1ですが、よさそうなところを見繕い、光速で幕営、なかに転がり込んで水浸しの衣服をやっと脱げました。

着替えただけであれだけ寒かったのが嘘のように暖まってきます。カッパなんていらんわいと侮っちゃいけません。衣服が濡れるのは命取りとまでは言わないまでも、高峰ではご法度。今回は面倒くささが勝ってカッパを羽織るのが遅かったのもあり、ぐっしょり最悪の気分でした。

なんにせよ着いた。北アルプスレベルになると夜は夏でもふつうに寒いので、冬みたいなかっこうに着替え、お待ちかねの飯をば。

アルファ化米、ないやんけ!

なんとまあお粗末なことに、夜飯の白米と朝飯の味付け米を入れるの忘れました。残るはチーズ4切れと白米にかける予定だった中華丼だけ。これは痛恨のミスですなあ。しかたないのでチーズをむしゃむしゃやって、中華丼はそのままいただきました。食べ終わった瞬間腹が鳴りましたからね。こんなにみじめな夜もそうないのではあるまいか。

これにて1日めは終了。2000すぎには歯磨きまで終わりましたので、あとは寝るだけです。晴れた日なら深夜に星空観賞会をやるのがよいですよ。冗談じゃなく、初見だと度肝を抜かれることうけあい。

星は見かけの明るさで一等星とか六等星とか分類されてますが、そのすべてが見えてるんじゃないかというレベル。さらに天の川が夜空を堂と横切ってるのが肉眼ではっきり見えます。天の川というのは銀河の渦状腕の端っこのことで、あのなかに途方もない数の恒星が散らばってるんですね。宇宙の広さを実感できる圧倒的体験と言えましょう。

もちろんこの日は終始曇天ですので鑑賞会、中止!疲れたし、さっさと寝るに限ります。1230出発、1830着ですので、およそ6時間ですか。けっこう早いほうだと思いますが、2日めはどうなることやら。雨ならもう双六岳もいかずに帰ろうかしら。

つづく